当院では、患者様の早期回復とQOL(生活の質)向上のため、多職種が連携するチーム医療を推進しています。

今回は、栄養サポートチーム(NST)の取り組みの中で、「低栄養と重度褥瘡から自己摂取再開までに至った事例」についてご紹介します。

NST(栄養サポートチーム)って何?

NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)とは、患者様の栄養状態を評価し、適切な栄養管理を行うための多職種チームです。

精神科である当院では、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、言語聴覚士、理学療法士、臨床検査技師が連携し、患者様一人ひとりの生活背景を踏まえながら、薬剤の影響や食事摂取状況、嚥下機能などを総合的に評価し、安心して食べ続けられるための食支援を大切にしています。

患者様の背景と課題

患者情報

年代・性別
70代・女性
疾患
躁うつ病、パーキンソン症候群、重度褥瘡

入院時の状態

著しい体重減少があり、BMIは15.8と重度の低栄養状態でした。
また、自力での食事摂取が困難な状態であり、重度の褥瘡(床ずれ)も発生していました。

※BMIの区分:痩せ 18.5未満/標準 18.5以上25未満/肥満 25以上

2つの悪循環からの脱却

当時の患者様は、身体的・精神的な要因から深刻な悪循環に陥っていました。

身体的要因

パーキンソン症候群による活動低下が終日臥床を招き、嚥下機能とADL(日常生活動作)が低下したことで、褥瘡が発生していました。

精神的要因

躁うつ病による不眠や日中傾眠により食欲が低下し、低栄養状態が進行。褥瘡の悪化をさらに助長していました。


身体的・精神的要因と低栄養、褥瘡の悪循環を示す図
身体的・精神的要因による悪循環(画像を押すと拡大表示)

専門スタッフによる多職種連携

各部門の専門スタッフが綿密に連携し、包括的な介入を行いました。

【栄養部・検査室】
 ・栄養量の再設定(ミキサー食と補助食品・輸液の組み合わせ)。
 ・検査データに基づく栄養状態の定期評価と、段階的な食上げの実施。
【医師】
 ・治療方針のトータルコーディネート、各部門との相談・意思決定のサポート。
【看護部】
 ・毎日の創部ケアと体位変換の実施。NSTおよび褥瘡委員会との連携を通じた除圧管理。
【薬剤部】
 ・パーキンソン症候群に対する処方状況確認と、症状に合わせた薬剤調整。
【言語聴覚士(ST)】
 ・補助食品を用いた嚥下訓練、嗜好の探索、ミキサー食から粗刻み食への経口摂取訓練の継続。
【理学療法士(PT)】
 ・関節可動域(ROM)運動、基本動作訓練、持久力強化。車椅子座位による離床サポート。

支援の成果

全スタッフが足並みをそろえて介入した結果、数か月で大きな回復が見られました。

食事形態の改善

ミキサー食

→

常食

ミキサー食から、常食を食べられるまでに回復しました。

ADL(日常生活動作)の向上

終日臥床・全介助 → 歩行器で自立移動へ

歩行器を使い、自立して移動できるまでに回復しました。

褥瘡の治癒・縮小

重度の潰瘍 → 多くの部位が治癒・改善

黒色壊死組織を伴う重度の潰瘍がありましたが、適切なケアにより改善が見られました。


褥瘡の状態と支援後の経過を示す資料
褥瘡の経過(画像を押すと拡大表示)

DESIGN-Rとは?
褥瘡の状態や治癒の経過を評価するための指標です。
日本褥瘡学会「褥瘡評価ツール 改定DESIGN-R®2020」

まとめ

多職種連携は、患者様の回復を後押しする大切な鍵です。

医師の治療方針のもと、看護の継続的なケア、リハビリテーションの介入、そして適切な栄養管理が揃うことで、患者様の回復とQOLの向上につながることを改めて実感しました。

当院ではこれからも、チーム医療を通じて患者様お一人おひとりに寄り添った医療を提供してまいります。