臨床検査室

臨床検査の役割

皆さんがよくご存じの採血や心電図、そのほかエコーや脳波などの臨床検査は、医師が行う問診・聴診と同様に日常診療においては欠くことのできない診断法の一つを占めております。
また、臨床検査は患者様の治療方針を決定するうえで道しるべとなる重要な検査であり、検査結果の十分な理解が病状把握・重症度や治療効果の判定に役立ちます。

臨床検査とは

臨床検査技師は、多くの種類の検査を行いますが、大きく分けると『検体検査』と『生理検査』に分けられます。

検体検査とは

血液や尿をはじめ、便や痰、胸水や腹水、関節液、髄液など体内のあらゆる部位に存在する体液中の各種物質の濃度や働きを測定します。

  1. ①一般検査
    尿、便を調べます。尿の成分を測定することにより、腎・尿路系疾患、肝疾患や糖尿病を知ることができます。また、便の検査では、消化管出血や寄生虫の感染などが分ります。

    顕微鏡画像

  2.               

  3. ②血液検査
    赤血球、白血球、血小板の数から貧血、感染症、白血病などの血液疾患等の検査を行います。対象が微小な細胞なので顕微鏡で形を見て判定することもあります。

    血液検査

  4.                  

  5. ③生化学検査
    各臓器には、様々な酵素・ホルモン・代謝物が存在します。それらの血液の中の濃度を測定することにより、心臓、肝臓、腎臓、内分泌など体内で弱っている部位の特定ができます。また、採血することにより、がん細胞から産生される腫瘍マーカーも調べることが可能です。

    生化学

    免疫学

    電解質

生理検査とは

皆さんの体に直接触れて行う検査を生理機能検査といいます。当院では、心電図、24時間心電図、超音波検査、脳波検査の4項目の検査を実施しております。

1.心電図検査

心電図検査

この検査は、脈の乱れ・胸の痛み・呼吸困難・失神などの症状や原因不明のショックといった場合の診断あるいは経過観察のために行い、検診等でも必要とされる検査の一つです

何を記録しているの?
心電図

心電図は、心臓が動くたび患者さんの体内から生じる微弱な電気的活動を記録する検査です。決して、患者さんに電気を流して行う検査ではありませんので、ご安心ください。

どうやってするの?時間がかかるの?

手首・足首・胸を出してベットに仰向けに寝ていただきます。この時、足は軽く開いて両手は体から少し離してください。技師が手首足首及び胸に電極を付けます。
体の力を抜いてゆっくりし、手足等を動かさないで下さい。記録自体は1分長くても2分ぐらいで終わりますが、動いたり体に力が入ったり、おしゃべりをするとスムーズに検査ができない場合は、時間がかかります。
記録が終わりましたら、電極を外して検査終了です。

何がわかるの?

不整脈の有無や種類、心筋梗塞、心臓肥大、心筋炎などの可能性ですが、詳細については医師にお尋ねください。

2.脳波検査

脳波検査

脳波検査とは、脳が活動すると脳の中に微弱な電気が流れます。その電気的な変動を頭部につけた電極でとらえ、波形として記録し脳の働きを調べるのが脳波検査です。

脳波検査でわかること
脳波検査でわかること

脳波は、周波数によってα波・β波・θ波・δ波に分類されます。目を閉じて静かにリラックスしている時はα波という緩やかな波が、目を開けた時や計算をしているときはβ波という速い波がよく現れます。
検査では、背景活動と呼ばれる全般的・持続的な律動やこれとは明らかに区別される突発波の周波数や波形パターンを調べます。
また、安静時だけでなく光刺激(点滅するフラッシュ)、過呼吸(3分間の深呼吸)により誘発される突発波がないかを調べます。
このように脳波検査は、てんかんの診断・病型判定、けいれんや意識障害の評価、器質性脳障害や睡眠異常の診断等に用いられます。

正常脳波
脳波

脳波を安静・覚醒・閉眼の状態で記録すると周波数10Hz前後で振幅50μV程度のα波が潮の干満のように大きくなったり小さくなったりして、後頭部付近を中心に左右対称的に連続して出現します。これが正常成人の基本的な脳波波形です。

異常脳波

①てんかん性脳波には、棘波・鋭波・棘徐波複合体等の突発性異常波があります。異常波の間欠期には不規則な徐波が存在し、背景脳波が乱れています。

②脳炎では急性期に徐波が出現し徐々に改善していきます。

③器質性脳障害(脳腫瘍・脳血管障害・頭部外傷による脳損傷など)で脳の機能障害が生じると徐波化などの脳波異常を示します。

④意識障害は、その程度に応じて徐波化が起こります。

⑤脳死の脳波は全誘導で平坦化します。

注意事項

1) 検査には30分ほどかかります。事前にお手洗いをお済ませ下さい。

2) 検査自体に痛みはありませんが、頭皮上にクリーム状のペーストを使って皿電極を装着します。検査後は洗髪をお願いします。

3.超音波検査

超音波検査

超音波は、人間の耳には聞こえない高い周波数の音波で、これを利用して外からは見えない腹部や血管の輪切りなどの写真を撮ります。人体に影響はなく痛みもありません。
検査時間は20~30分ぐらいです。
各検査では、画像を見やすくするためお部屋を暗くしています。

①腹部

検査前の注意事項
検査前は食事を取らないで下さい。牛乳などの脂肪分を含む飲み物も控えてください。ただし、血圧の薬などは大丈夫ですが、血糖を下げる薬は検査終了後にしてください。

②頸動脈・甲状腺

注意事項
タートルネックなどの洋服では、脱いで頂くことになるので襟元の広い服でお願いします。

4.ポリソムノグラフィー(PSG)携帯型検査

ポリソムノグラフィー(PSG)携帯型検査

睡眠時無呼吸症候群(Sleep apneu syndrome : SAS)とは、睡眠時に呼吸が止まる、または浅く・弱くなりそれによってさまざまな障害を引き起こす疾患です。
最近では、SASが循環器疾患との深い関わりがあることが明らかになっています。
SASの病態には大きく分けて3タイプあります。その多くは上気道(空気の通り道)が塞がる、または部分的に狭くなることで起こる閉塞型睡眠時無呼吸症候群です。
夜間に繰り返し起こる無呼吸により血液中の酸素濃度が低下して、睡眠中に何度も目が覚めるなど体に悪影響及ぼすとともに睡眠を妨げ、日中の眠気を増加させます。

SASのおもな症状

ポリソムノグラフィー(PSG)携帯型検査

  • いびきをかく
  • 何度もトイレに起きる
  • 日中の強い眠気
  • 寝汗をかく、寝相が悪い
  • 倦怠感、頭重
  • 集中力・記憶力の低下

一般的にSASの重症度は、AHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数で表すことが多く、これは1時間あたりの無呼吸・低呼吸(呼吸が浅く弱くなる状態)の発生した回数を意味します。このAHIが5回以上認められ、日中の眠気等の症状がある場合にSASと診断されます。

ポリソムノグラフィー(PGS)携帯型検査とは?

ポリソムノグラフィー(Polysomnography:PSG)携帯型検査は、SASの検査において無呼吸の種類、AHIを調べるうえで必要最低限のセンサーだけで行う検査です。
睡眠中の呼吸状態を調べるために鼻、胴、指先に3種類のセンサーを装着します。
センサーは、それぞれ呼吸状態・呼吸努力・血中酸素飽和濃度を測定します。装着時、記録時は痛みもなく、寝返りも可能ですから普段通りにお休みになれます。
検査結果の解析は当院で実施しておりますので、検査機器返却後診察を待っている間に解析し、診察時に先生から解析結果を聞くことが出来ます。

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